よくわかる遺言書の書き方

遺言書は必要?11のチェックポイント

配偶者はいるが、子どもがいない
亡くなる配偶者の兄弟が遺産の4分の1を取得してしまいます。不動産の場合は、配偶者の兄弟と共有になってしまい、売るに売れなくなってしまいます。すぐに遺言書を作成して配偶者にすべての遺産を相続させる遺言を作成しなければなりません。
独身である
亡くなられた後の遺骨の管理や財産の清算を決めておかないと、あなたを供養する人がいなくなってしまいます。遺言書を作成して、後々のことを決めておく必要があります。
後妻・後夫がいる、先妻・先夫との間に子供がいる
たいていの場合、離婚後の元配偶者やその間に生まれた子どもとは疎遠になりがちです。そのため、遺産分割協議でもめることが多いです。残されるご家族が相続争いで不幸にならないために、遺言書を作成してきっちりと財産の分配を決めておく必要があります。
内縁の夫・妻がいる
内縁の夫・妻には相続権はありません。こういった場合には、①入籍する ②遺言書を作成して財産を相続させるなどの手段を取らなければなりません。
相続人に行方不明の方がいる
相続人の中で行方不明の方がいる場合、遺産分割協議は難しくなります。公正証明遺言書を作成して、行方不明の方に相続させない遺言を作る必要があります。
婿や嫁に相続させたい
血縁関係のない婿・嫁には相続権はありません。遺言書で財産を贈与するなどの必要があります。
相続人以外の第三者や公益団体(病院や学校など)に寄付したい
事前に公益団体が寄付を受け付けるところか調査しておく必要があります。また、財産の種類(特に不動産)によっては、寄付を拒否されることもあり、税金の発生の有無にも気を付けなければなりません。
ペットを飼っている
あなたが亡くなられたあとにペットの世話をする人がいなければ、信頼のおける人や団体にペットをゆだねる必要があります。
会社を経営している
会社の株式は、後継者1人に承継させる必要があります。そうしなければ、株式が細分化されてしまい、経営が不安定になってしまいます。また、相続税や今後の経営など、専門家と一緒にしっかりと事業承継対策を立てる必要があります。
アパート・マンションを経営している
相続と同時にスムーズに管理を引き継がなくてはなりません。特定の後継者に承継させる場合には、その旨を遺言書で示す必要があります。また、相続税や代償財産をどうするかの検討もしなければなりません。
相続税が発生しそうな場合
相続税の発生が見込まれる場合、節税対策はもちろんですが、期限までに納税できるように対策を立てておく必要があります。

遺言執行者の指定

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために特に選任された、被相続人の代理人となる人のことを言います。遺言の内容通りに実現されるかどうかは、遺言執行者次第とも言えます。

遺言執行者の指定

遺言執行者は遺言で指定します。また、遺言で指定の委託をすることができます。もし、遺言で指定していなかったり、指定後に遺言執行者が死亡していた場合などには、家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求することができます。

遺言執行者の欠格事由

誰でも遺言執行者になることができますが、未成年者や破産者はこれに含まれません。一般的には、推定相続人や受遺者、専門家(弁護士や行政書士など)がなる場合が多いです。

遺言執行者の権利・義務

遺言執行者は、相続財産の管理やその他の遺言執行に必要な行為をする権利と義務があります。被相続人は、相続財産の処分やその他の遺言執行を妨げる行為をすることはできません。しかし、特定の遺産についての遺言であれば、それ以外の遺産についての権利義務はありません。

遺言執行者の地位

遺言執行者は相続人の代理人とみなされます。特に、不動産の遺贈などの場合は、遺言執行者が登記義務者である相続人の代理人となりますので、スムーズに移転登記ができます。

遺言執行者の報酬と費用

遺言執行者の報酬は遺言で定めておくことができます。もし定めがなければ、相続開始後に相続人との間で相談するか、家庭裁判所に定めてもらいます。弁護士への報酬の相場は30万~遺産額の3%ほどで、金額は事例によって異なります。また、報酬を含む遺言執行費用は相続財産から支出(負担)することになります。

遺言書は勝手に開封してはダメ

遺言書の開封について

遺言書を発見しても、勝手に開封してはいけないと法的に定められています。

もし勝手に開封してしまった場合、5万円以下の過料が課せられることになります。

さらに、遺言書を書き換えたり、破棄した場合は無条件で相続人の資格を失うことになります。

封印してある遺言書を見つけたら、裁判所に持参して相続人や代理人の立会いで開封しなければならないのです。

遺言書の開封と検認は家庭裁判所で

遺言書の検認手続きとは、遺言書が遺言の方式に合ったものかどうかを確認するためと、遺言書が第三者によって書き換えられないように、家庭裁判所が証明してくれる一種の検証手続きのことです。

遺言書を保管していた人や見つけた人は、遺言書を家庭裁判所で検認手続きを行うために、「遺言書検認申立書」に「相続人等目録」を添付して提出します。

公正証書による遺言は、遺言の存在が公証人によって既に確認されていますので、原本が公証人役場に保存されています。

そのため、偽装や書き換えが起こることはありませんので、開封と検認の必要はありません。

勝手に開封してしまったら、遺言は無効になるの?
遺言を勝手に開封してしまっても、無効にはなりません。開封した人にペナルティが課せられますが、遺言そのものは有効です。
もし遺産を分割し終えた後に遺言書を見つけたら?
遺言書が見つからなかったので、遺産相続手続きを済ませてしまった後に遺言書を発見したらどうなるのでしょうか?
この場合、原則として遺言書の方が優先されます。
遺言書は被相続人の意思表示であり、形式に従って書かれたものであれば法的な効力が発生するからです。
とはいえ、遺言書の内容とは異なるものの、相続人全員が納得して遺産分割を終えていたのであれば遺言書ではなく、遺産分割を優先することもできます。

ご自身が遺言を残される場合、生前に家族に伝えておくか、遺言とは別に文書で書き残すなど、相続人たちが手間と時間を掛けずに済むように準備をしておくと良いでしょう。

この記事を書いた人

吉津健三

弁護士 吉津健三

福島県只見町出身。中央大学法学部法律学科卒。
平成18年、福島県郡山市できつ法律事務所を設立。
令和3年度、福島県弁護士会会長を務める。

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