2016.9.16

後遺症の悪化

交通事故に遭って示談が成立した後3年余り経過したころに、後遺症が悪化してしまった方からの相談事例を紹介します。交通事故の当時、膝の関節に神経症状が残ったということで後遺障害として14級の認定を受けて示談が成立し、後遺障害に対する慰謝料等も受け取ったそうです。しかし、その後徐々に症状が悪化してしまい、交通事故の後3年余り経過した時点で、医師に変形性膝関節症と診断され手術が必要になったとのこと。手術にかかる費用を請求したいけれど、交通事故の示談書には、「本合意書に定めるほか、本件交通事故に関し、甲乙間に一切の債権債務は存在しないことを確認する。」との文言があったので、これ以上の請求はできないのかという内容でした。

示談をしていても損害賠償請求をあきらめる必要はありません。

相談者様の場合、症状が悪化したことが、示談を行った当時予期していなかったものであって、かつ、悪化した症状について後遺障害の等級が14級よりも上の認定がなされた場合には、あらためて損害賠償請求を行うことができます。

交通事故の示談後の損害賠償請求は原則として不可能

交通事故の際の示談書には、大抵の場合、示談後は損害賠償請求を行うことはできない旨が記載されていますので、原則としては、示談後に損害賠償請求を行うことはできなくなります。
ただ、交通事故による怪我の後遺症は、事故の直後には、症状が悪化するかどうか予測が困難な場合が少なくありません。
このような場合、仮に示談書に前述のような文言が記載されていても、示談書を交わした当時、示談書を交わした両当事者が予想していなかった損害については、あらためて損害賠償請求をすることができるとされています(昭和43年3月15日の最高裁判所の判例でも、同様に判示されています)。

予期せぬ後遺症については損害賠償請求できる場合があります

相談者様の場合、仮に症状の悪化が、示談当時、予期していなかったものであれば損害賠償請求を行える可能性があります。その前提として、まず、悪化した後遺症について、後遺障害の等級の認定を行う必要があります。当初の認定では14級と認定されているので、悪化した現在の症状について、14級よりも上の等級が認定されれば、あらためて損害賠償請求ができる可能性があるのです。
ただ、事故から時間が経過している場合、症状が悪化した原因が交通事故によるものではないと判断されてしまうと、損害賠償の対象とならない可能性もあるのでご注意ください。

交通事故による後遺症の問題については、きつ法律事務所にお任せ下さい。

相談者様の症状は、変形性膝関節症ということですが、まず、当初の等級よりも上の等級を認定してもらうためには医師の診断書が必要ですから、医師に症状をしっかり説明する必要もあります。
事故当時よりも上の等級の認定を受けても、事故の相手方保険会社からは、症状自体が加齢によって生じたものだ、とか、悪化の原因は本人の生活状況や医師の治療の仕方に問題があったのだ、というように、交通事故以外の理由で症状が悪化したという反論をされることが考えられます。ですから、損害賠償を行うためには、症状の悪化の原因が交通事故にあることについてもしっかり証明しなければなりません。
当事務所では、損害賠償請求が可能かどうか、示談当初の症状やその後の悪化の状況について丁寧に考察した上でアドバイスを行いますし、等級の認定においても不利にならないようにお手伝いをさせていただきます。示談後であっても、何かご心配なことがあれば、できるだけ早い段階でご相談いただくことをおすすめします。

この記事を書いた人

吉津健三

弁護士 吉津健三
福島県只見町出身。中央大学法学部法律学科卒。
平成18年、福島県郡山市できつ法律事務所を設立。
令和3年度、福島県弁護士会会長を務める。

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