2014.9.1

先日、福島県浜通りから関東圏の某県に避難されている方の法律相談を受けました。その方は別の依頼者からお受けした事件の関係で、その依頼者がお世話になった不動産屋さんからご紹介を受けた方でした(このように、いろいろな形でお客様とのご縁をいただいております)。

 

相談当日、その方は関東圏から新幹線で当事務所までいらっしゃいました。何でも、某県の法律相談会に行って相談したけれども、すっきりとした回答が得られなかったので、上記の不動産屋さんから私を紹介されたとのことでした。

 

いろいろお話を伺いましたが、私のこれまでの経験と知識に照らして、どうもその方のご希望を現行の法律で実現することは相当困難で、費用倒れに終わることが明らかと思われました。そこで、その旨を伝えましたところ、その方は私の回答に理解を示されました。

 

相談が終わって、今日は、せっかく福島までいらっしゃったのだから、ご自宅に行ってみられるのですか?と質問したところ、まっすぐ避難先に帰るとのお返事でした。

 

そこで、私が、「それでは、きつ法律事務所に相談(約1時間)のためだけに、新幹線を使ってわざわざお越しいただいたのに、ご希望をかなえることはできそうもないという結論になり、何だか申し訳ないですね(別に私が悪いわけではないのですが…)。」と話したところ、その方のお返事は以下のとおりでした。

 

「いえいえ、別の法律相談会で相談を受けてもすっきりしない気持ちで過ごしてきましたが、先生の回答を得て、できないならできないと割り切って、すっきりした気持ちで過ごせるので有り難いです。」
以上のお返事とともに感謝の言葉をいただきました。

 

当然のことですが、本当はできることをできないという回答をすれば、それは弁護士のミスです。
また、できない(できにくい)ことを、できそうだと説明して、お客様から費用を頂戴して、(予想できたとおり)できないという結果に終わった場合には、それはお客様に迷惑をかけるだけのことになります。

 

私は日々研鑽を怠らず、できるかできないかの見極めをできるようにしています。今回のケースでは私の経験と知識に照らして費用倒れに終わることが明らかで、結論としては、できないという判断をしたものでした。

 

上記の方の返事をお聞きして、「できない」という法律相談にも十分に意味があることを改めて知った次第でした。

この記事を書いた人

吉津健三

弁護士 吉津健三

福島県只見町出身。中央大学法学部法律学科卒。
平成18年、福島県郡山市できつ法律事務所を設立。
令和3年度、福島県弁護士会会長を務める。

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