2016.11.28

去る11月24日(木)14時から16時にかけて、福島地裁郡山支部で開催された裁判員経験者を交えた意見交換会を傍聴してきました。

これは、裁判員裁判(殺人等一定の重い罪について裁判官3名と市民から選ばれた6人の裁判員で裁判を行う制度です)に実際に参加したことのある裁判員の方に、裁判の手続きについて感じたこと等を述べていただくという会でした。裁判官と検察官と弁護士各1名ずつも意見交換会に参加していました。

裁判員経験者の方は6人出席されていて、それぞれ強盗殺人、危険運転致死、強制わいせつ致傷等々の裁判員裁判を経験されたとのことでした。
最初、裁判員に選任された時は、不安に思われていたようですが、実際の裁判における諸々の手続きについては、特に分かりにくいこともなく、負担に感じることもなかったとのお話でした。

私も、裁判員裁判は、1回担当しただけですが(殺人事件)、裁判員経験者が感想を述べられたような分かりやすい説明等ができていたか反省する機会となりました。その意味では貴重な会議を傍聴したと思います。

ところで、私の経験した裁判員裁判の際、裁判員の方の中には、シャツの前のボタンを全部外して、中のTシャツが見えていた方がいらっしゃいました。
私は、いかに市民の声を裁判に反映させる手続きでも、意見の反映のさせかた、すなわち、その服装については場所柄をわきまえたものでなければならないと思いましたので、初日の裁判が終了した後、裁判所に対し、裁判員の服装については何か説明等はしているのかと質問しました。
しかし、翌日もその裁判員の方は同じスタイルで法廷のひな壇に座られました。私は、いかに被告人が悪いことをしたとはいえ、その一生を決める手続きである以上、あまりにも失礼なスタイルだと思いました。場所柄をわきまえることもできない方が参加した手続きによる判決を、被告人が心から受け入れられるのでしょうか。私の中に極めて大きな疑問を残した経験でした。

ところが、この冒頭の意見交換会の席上で、何人かの裁判員経験者の方から、全く同じ意見が出たのです。ある方は、ジーパンとTシャツ姿の裁判員と一緒に裁判をしたとのことでした。その方は、人の一生を決める手続にTシャツで来るなんてふざけるなという感じだったと述べられました。まさに我が意を得たりでした。
また、別の方は、服装について、個人をできるだけ特定できないようにする意味で、裁判官と同じような法服様のものを用意してほしいと言われていました。実際、やくざがらみの事件で、裁判終了後、被告人の仲間から裁判員が声をかけれらたというニュースが最近流れていました。
私には、その観点が抜けていましたので、なるほどの意見でした。

市民の感覚を裁判に取り入れることと、市民だから服装は街中を歩いている姿で良いということとは別物だと思います。
法廷の威厳を保ち、被告人に失礼のないようにするため、他方では、裁判員の識別をしにくくするために、裁判員の方に法服のようなものを着用していただくことにしていただきたいと思います。

ちなみに、この日、裁判所で開かれた意見交換会に参加された裁判員経験者は男性女性ともそのような会に出席するに相応しいスタイルでした。それが、「市民の感覚」だと思います。

ジーパンにTシャツ姿の裁判員が参加した裁判は、被告人の目から見て、「市民の感覚」が反映されたものとはいえないと思います。

この日の意見交換会を傍聴できたことは大変良かったと思います。

この記事を書いた人

吉津健三

弁護士 吉津健三

福島県只見町出身。中央大学法学部法律学科卒。
平成18年、福島県郡山市できつ法律事務所を設立。
令和3年度、福島県弁護士会会長を務める。

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